奥地ほうぼく豚がどこで、どのように育てらているのか、思いや背景を含めて楽しんでいただける豚を育てたいと思っています。

奥地ほうぼく豚とは

OKUCHIHOUBOKUTON

なぜ、放牧なのか

養豚農家3代目 長岡 慶

西予市三瓶町の養豚家に生まれ育ったわたしは、豚たちと一緒に育ちました。

大学進学で故郷を離れ、先の人生を考えたとき、" 100%情熱を注げるものに尽くしたい "という思いに、養豚をとりまくさまざまな課題から抱く使命感が後押しし、養豚家になろうと決意しました。

「養豚は豚を可愛がる仕事ではない」

ある日、死にそうな豚を、夜通し世話をしていた時、父に言われた一言です。


きつい言葉でしたが、父の言ってることは妙に腑に落ちました。どれだけ効率よく、早く規格通りの豚を安定的に生産できるか。それが、今の畜産には求められています。一方で、狭いスペースで飼育される豚たち、予防的に与えられる薬剤、そういったものへの違和感がありました。

経済合理性を追求するだけではなく、大好きな豚たちがのびのびと自然に近い、ありのままで過ごせる方法はないか。そうして辿り着いたのが今の耕作放棄地を使った放牧というスタイルです。

当初は父も反対していましたが、虚弱で淘汰される可能性が高い豚10頭を試しに豚舎の裏庭に放牧してみたところ、みるみる元気になる姿をみて、「豚にとってこれだけ良いことなら」と放牧での飼育を応援してくれるようになりました。

そして、2022年3月30日、使われていなかった遊休地に小屋を立て、柵で囲い、豚5頭を放牧するところから放牧が始まりました。

次は、豚たちがどこで、どのように育つか、一緒に見てみましょう!

のびのび暮らす豚たちの一生

01

© 山本 麻子

分娩・授乳期

約1ヶ月

妊娠中も分娩もフリーストール(※)で、母豚も自由に動き回れる環境で子育てをしています。母豚がストレスなく過ごせることが、仔豚の健やかな成長につながります。

産まれたばかりの豚たちは約1kgほど。手のひらサイズです。初乳は、免疫獲得のために非常に重要です。産まれたばかりは、豚たちは、まだ目もあまり見えていませんが、母豚のお乳を求めて、吸い付きます。

一般的には、尻尾をかじり合わないように断尾をしますが、飼育環境を広めに取ることで尾かじりがなくなったため、断尾は廃止しています。歯切りは、一度廃止しましたが、母豚の乳を噛んで、血が出てきてしまうようになったため、生後数日の間に実施しています。


※ 妊娠中の母豚を狭い個別の檻(妊娠ストール)に入れず、広い区画で自由に動き回れるようにした飼育方式です。

1回の出産で12~15頭ほど産まれます!産まれたばかり豚たちはツヤツヤしていて可愛いです。

02

離乳

約1ヶ月

母豚のもとから離れる離乳期間です。兄弟や同じ時期に産まれた子たちと一緒に過ごします。一般的な餌に慣れるために、粉ミルクを食べて育ちます。母乳からもらえる免疫がなくなるため、弱りやすくなるので、注意が必要な時期でもあります。病気にも罹患しやすくなるので、この時期の約1か月のみ、飼料に抗生物質を混ぜて、病気を予防しています。

母豚のもとから離れたばかりは、弱りやすいので注意深く観察が必要です!

03

© 山本 麻子

仔豚期

約1.5ヶ月

仔豚舎へ移動し、ここで放牧までの準備期間を過ごしながら、粉ミルクから穀物中心の飼料に切り替わっていきます。豚舎の床にはオガ粉を敷き詰めていて、糞尿を吸着・発酵させて堆肥にしています。オガ粉の床は、豚たちが本来持っている穴を掘る習性も満たしてくれます。早ければ1ヶ月ほどで、放牧地へ。

段々とプリプリとしたフォルムに。好奇心は旺盛ですが、臆病なので近づいては、離れていきます!

04

放牧地へ

約 4〜6ヶ月

ついに耕作放棄地や遊休地などの放牧地へ移動します。元みかん畑の耕作放棄地や遊休地で、1頭あたり50〜200㎡の広さを確保しています。一般的な養豚(0.8㎡)の50倍以上の広さで、のびのびと育ちます。

© 山本 麻子

© 山本 麻子

© 山本 麻子

最初は見慣れない外の世界に戸惑いながら、少しずつ適応していきます。慣れると、穴を掘り、お昼寝スポットをつくったり、放牧地に生えた草を食んだり。思いおもいの時間を自由に過ごします。

放牧期間の後期には、とうもろこしフリーの配合飼料の他に、酒粕・麦・米・牡蠣殻などを混ぜた自家配合飼料や放牧地の草、農家さんからいただく季節の野菜や果物を食べながら元気に育ちます。お水は、山水を給水タンクに貯めて、常に飲めるようにしています。放牧地をのびのびと動き回り、雑草や土の中のミネラル、微生物を自然に取り込むことで、豚たちは病気にかかりにくくなります。

通常の養豚では約6ヶ月で出荷されますが、奥地ほうぼく豚は8〜10ヶ月。豚たちの成長をじっくり見守りながら、ゆっくりと育てています。

自由に過ごす豚たちの姿はずっと見ていられます。放牧地のご見学もできますので、ぜひ。

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出荷

出荷は、タイミングを見極めながら行います。放牧養豚で一番苦労するのは、実は、この出荷です。

140kg近くに成長した豚たちは人間の言うとおりには動いてくれません。豚たちの大好物で釣りながら、トラックに乗り込んでくれるのをジッと待ちます。傾斜地では、クレーンやリフトといった重機を使います。

豚たちの気分が乗らないときは、一旦、諦めることも。

豚たちがいなくなった放牧地は、雑草はきれいさっぱりなくなり、掘り起こされた後があちらこちらに。

放牧地は連作障害を防ぐために、一旦、休耕します。

今後、豚たちが耕した土地で農作物を育てたり、農家さんに使ってもらったりすることを目指しています。

一筋縄ではいかない出荷作業。急斜面を走り回られたら、どうすることもできません(笑)

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奥地ほうぼく豚として、飲食店や食卓に

出荷後に自分たちで引き取り、飲食店さん等に直接配達・発送したり、精肉や加工品として、食卓に。

自分たちの育てた大切な豚たちがどこで、どのように食べられているのか。自分たちの手で届けるところまでを大切にしています。

大切に育てた豚たちが、誰かの食卓で「おいしい」と言ってもらえること。それが何より嬉しいです。

crucruの循環型養豚

放牧が、味に出る

脂の甘み


通常より2ヶ月以上長い、8〜10ヶ月の長期飼育。時間をかけてゆっくり育つことで、脂に甘みや旨みのもとになる成分がじっくりと蓄積されていきます。豚肉のおいしさに関わる筋肉内の脂肪は、成長の後半に発達するため、長く育てるほど風味が豊かになります。口に入れたときにふわっと広がる甘みは、この「ゆっくり」から生まれています。

歯切れのよい肉質


運動をすると肉が硬くなるのでは?と思われるかもしれません。でも、のびのびと自由に動いてついた筋肉には柔軟性があり、歯切れがよく、程よい弾力のあるお肉に仕上がります。アスリートのしなやかな筋肉に近いかもしれません。

くさみのない、すっきりとした味


放牧の後期に与える飼料には、一般的な養豚で広く使われるとうもろこしを配合していません。とうもろこしに多く含まれるリノール酸は、脂肪に蓄積すると加熱時に好ましくない風味の原因になることがあります。とうもろこしを抜くことで、脂がすっきりとした、くさみの少ないお肉に仕上がります。また、放牧地の草や多様な植物を日常的に食べることで腸内環境が整い、豚肉の風味もよくなると考えられています。